9月に入り、そろそろ健康診断業務が本格化してばたついていらっしゃる頃でしょうか。既に申し込みは終えていてあとは従業員の受診を待つのみという方、これから予約を行うという方、様々かと思います。

そもそも、健康診断は何故行わなければならないのでしょうか。また、従業員数によって受診要件や手続きが変わることはあるのでしょうか。今回は、健康診断を受けるにあたっての前提のお話や、法律で定められている内容、健康診断を受けたあとのお話と内容盛りだくさんでいきたいと思います。

 

そもそもどうして健康診断を受ける必要があるのか

企業の人事担当者が健康診断の受診手続きを進める中、頑なに健康診断を受けようとしない従業員もいるのではないでしょうか。(実際に私もそのような方に遭遇して困っております…)

 

労働安全衛生法を見てみると、第66条1項において「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」 と定められています。従業員何名以上等、会社の規模で決まるものではなく、小さな会社であっても一人でも人を雇えば、健康診断を受けさせる義務が発生します。そして、同条5項では、従業員にも健康診断を受ける義務が課せられています。

また、健康診断の結果は、同法第66条の6により、会社が労働者に通知する義務が課せられている上、会社が同法第66条1項に違反した場合、あるいは同法第66条の6に違反した場合は、同法第120条により、50万円以下の罰金の対象となります。こうしたことを踏まえれば、健康診断の受診義務を負っているにもかかわらず、受診しない労働者に対しては、やりすぎと思われるかもしれませんが、懲戒処分をもってしても受診させたいものであります。

また、単純に法で定められているからということではありません。近年、早期では自覚症状が無いが、症状が現れた時にはすでに進行してしまっているという病気も少なくありません。自覚症状の無い病気を早期に発見するために、無症状のうちから定期的な健康診断を受けることが重要になってきます。自らの健康を守るためにも、まずは社員一人ひとりが自分自身のからだに向き合うことが予防の第一歩です。1年に1回の定期健康診断を有効に活用していきましょう。

 

企業が実施義務をもつ健康診断の要件とは

1.健康診断の種類

一口に健康診断と言っても、タイミングや従事している業務によって対象者や時期、内容が違います。それぞれ見て行きましょう。

一般健康診断

一般的に受診する「健康診断」といえばこちら。特に、年に1回行う健康診断は下記の表の「定期健康診断」にあたります。

※1: 労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務 とは下記を言います。

イ)多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ )多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ )ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ )土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ )異常気圧下における業務
ヘ )さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト )重量物の取扱い等重激な業務
チ )ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ )坑内における業務
ヌ )深夜業を含む業務
ル )水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、
か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ )鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、
亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに
準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ )病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ )その他厚生労働大臣が定める業務

 

特殊健康診断

 

ここからは、一般健康診断(雇い入れ時・定期の健康診断)についてお話していきます。

2.一般健康診断の受診項目

実際の一般健康診断の項目例は、下記の通りです。これに従業員本人の希望を聞き、オプションとしてつけても構いません。

① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④ 胸部エックス線検査及び喀痰検査
⑤ 血圧の測定
⑥ 貧血検査
⑦ 肝機能検査(GOT、GPT及びγ-GTPの検査)
⑧ 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)
⑨ 血糖検査
⑩ 尿検査
⑪ 心電図検査

 

3.一般健康診断の対象者と費用

上記が一般健康診断の主な対象者は、常用雇用労働者パートタイム労働者です。パートタイム労働者については、1週間の所定労働時間が当該事業場の同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上である場合に該当となります。

尚、労働者が自分で決めた医療機関で受診してもOKです。事業者の指定した医療機関以外で健康診断を受けたとしても、その結果の書面を事業者に提出すればよいのです。また、法律で受診が定めれられていることから、健康診断の費用については事業者が負担することになっています。(オプションは法定の項目ではないので、従業員負担で問題ありません)

 

健康診断を受診した後にすべきこと

健診結果は主に会社に戻ってくることと思います。ご本人控えはご自宅に直接届く場合も、会社控えと一緒に届いて人事担当者が手渡しする場合もあります。そのとき、必ず確認するべきことがあります。

健診の結果の取り扱い

健康診断の結果を確認して異常がある従業員がいた場合は、その従業員に対して健康の為の措置について、医師の意見を受けなければなりません。産業医と契約をしている場合は、結果を産業医に確認してもらい、指導が必要な人がいれば面談を設定して健康管理を行う必要があります。医師の意見を勘案し必要があると認めるときは、作業の転換・労働時間の短縮等の適切な措置を講じることが義務づけられています。(安衛法第66条の5 )

健康診断個人票を作成(もしくは会社控えを確認)して、5年間保管しておく必要があります。

常時50人以上の労働者を使用している事業者は、労働基準監督署に健康診断の結果を報告する義務があります。実施報告書の人数と、実際に受診すべき人数が合わない場合、労基署から勧告や指導が入る可能性があります。

 

まとめ

ここで、健康診断を受けるにあたって従業員に持ってもらいたい心構え 6か条 をご紹介したいと思います。

1. 毎年欠かさず健診を受ける

1年に1回、必ず健診を受け健康管理にお役立てください。今の体の状況を知り、自分にあった生活習慣となるようにしましょう。

2. 健診結果に必ず目を通し、保存する

後回しにせず、検査結果はすぐに見て隅々までチェックをしましょう。クリニックによっては毎年の結果を並べて印刷してくれるところもあり、推移を確認することができます。経年の変化を把握しておくことが重要ですので、健診結果は必ず保存しましょう。

3. 結果はきちんと受けとめ、改善目標を立てる

健診結果はこれまでの生活習慣の結果を示すものです。結果を受けとめ、食生活や運動習慣、休養、喫煙など、生活習慣の改善目標を立て、実行しましょう。

4. 気になることがあれば健診機関に相談する

不明な点があれば、健診当日でも、結果を受け取った後でも、健診機関に相談しましょう。基準値の範囲内でも、年々数値が上下する項目など、気になる点があれば迷わず相談しましょう。

5. 二次検査(再検査、精密検査)を恐れない、面倒がらない

「以前も受けなかったけど大丈夫だった」は大変危険です。自覚症状なしに進行する病気もあるため、速やかに二次検査を受診し早めの診断を受けましょう。

6. 「異常なし」を過信せず、日ごろから体のチェックを行いましょう

ときどき体の自己点検をしましょう。体の状態は、数ヵ月単位で変わることもあります。日々の生活習慣が、あなたの明日の健康をつくります。

 

いかがでしたでしょうか。従業員が1人でもいる場合は、必ず健康診断を受診させなければなりません。義務を怠ると罰金を課せられるだけでなく、大事な従業員の健康管理がうまくいかず、最悪の結果を招く恐れもあります。忘れずに毎年必ず受診させましょう。